鬱病日記 2006年2月8日

手のひらの世界

遠い昔、世界には色が溢れていた。翠の風が吹き、空は何処までも蒼く、生活には光が溢れていた。色だけではない。音もまた溢れかえっているようだった。たくさんの歌、喧騒、木を鳴らす風、鳥の声。
今はもう、昔の話。

回らなくなった地球の上に、小さな家、小さな部屋。小さなテーブルの上には描きかけの絵、その横に散らばるファッション雑誌。椅子の上に丸くなって座り、天井を見上げる。
部屋を暗くして、恋人にもらった簡易プラネタリウムをセットする。時折星が流れ、そのたびに願う。
『どうか世界をもう一度』

煙草に火をつけ、コーヒーを一口。安らかな眠りも、もうずっと訪れない。
うずく古傷を人差し指でなで、赤色の血を思い出す。あの頃私は足掻いていた。
座ったまま眼を閉じるけれどなにひとつ思い出せない。
私は生きている。ゆっくりと死に近づきながら。